目次
1. はじめに
この記事は株式会社ナレッジコミュニケーションが運営するチャットボット と AIエージェント Advent Calendar 2025 の22日目にあたる記事になります!
2. 概要
Microsoft 365 Copilotは“使うもの”、Copilot Studioは“作る(拡張する)もの” です。
- Microsoft 365 Copilot: Word/Excel/PowerPoint/Outlook/Teams など「Microsoft 365アプリの中で使う」AIアシスタント(ユーザー向け)。仕事の文脈で、許可された範囲の業務データも参照して支援します。
- Copilot Studio: 「AIエージェント(agent)を作る/カスタマイズする/配布する」ためのプラットフォーム(作り手向け)。単体のエージェントとして公開したり、Microsoft 365 Copilotに“追加戦力”として組み込むこともできます。
3. 本編
それでは、「使う側(Microsoft 365 Copilot)」→「作る側(Copilot Studio)」の順で見ていきたいと思います。
Microsoft 365 Copilotで何ができる?
Microsoft 365 Copilotは、Microsoft 365の各アプリの文脈で仕事を助けるAIです。ユーザーのプロンプトに対して、リアルタイムに回答/下書き/要約/分析などを返します。
できることの代表例:
- Word:文書のドラフト、要約、質問応答
- PowerPoint:資料のたたき台作成、要約、調整
- Excel:数式/可視化の提案、データの洞察
- Outlook:メールの要約、文面の作成支援
- Teams:チャット/会議の要約や質疑応答
仕組みのイメージ(超ざっくり)
Microsoft 365 Copilotは、ユーザーの入力を Grounding(グラウンディング:社内データなどの根拠に基づいて回答を生成させる仕組み) し、Microsoft Graph上の“そのユーザーが見える範囲”の情報を使いながらLLMに投げて回答を生成します。通信中の暗号化などにも触れられています。
セキュリティ/権限の前提
基本は「ユーザーが権限を持っているデータしか出ない」が大前提で、Entra IDの権限やPurviewのポリシー等が関与します。
Copilot Studioで何ができる?
Copilot Studioは、 エージェントを作って、テストして、公開して、運用する ためのプラットフォームです。自然言語やGUIでエージェントを作成でき、単体のエージェントとしても、Microsoft 365 Copilotに公開する形でも使えます。
できることの代表例
1) エージェントを作る(Q&A / 業務支援 / 自動化)
「FAQに答える」だけでなく、業務プロセスを実行したり、チャネル上に常駐する“専門エージェント”を作る、という位置付けです。
2) ナレッジ(知識ソース)につなぐ:RAG的な“生成回答(Generative answers)”
Copilot Studioには、トピックを全部作り込まなくても複数ソースから情報を探して要約する「生成回答」の考え方があります。
知識ソースの例(公式が整理している範囲):
- SharePoint
- Dataverse
- 公開Webサイト(指定サイトに限定して検索)
- Microsoft Searchでインデックスされたコネクタ由来の企業データ
さらにSharePointを知識ソースにする場合、 ユーザー認証(Entra ID)で“そのユーザーが見える範囲だけ”を返す こと、また一部の制約(例:生成回答のSharePoint利用は会話トランスクリプトに含まれない等)が明記されています。
3) 公開先(チャネル)を選べる:Teams / Web / Microsoft 365 Copilot など
Copilot Studioで作ったエージェントは、WebサイトやTeamsなど複数チャネルに公開できます。
Microsoft 365 Copilotに公開する選択肢も含まれます。
※補足
「Publish」=接続済みチャネルに最新内容を反映、ですが、ユーザーがTeams / Microsoft 365 Copilotで実際に使うには“配布(インストール/共有/組織カタログ)”が別ステップになります。
- Teams / Microsoft 365 Copilotチャネルを追加し、「Make agent available in Microsoft 365 Copilot」を有効化する
- 自分でインストールして動作確認 → インストールリンク共有、または組織展開(管理者承認)で配布
- 組織展開の場合、Microsoft 365管理センター(Copilot Control System)側で承認・割り当てが必要になるケースがあります
Copilot StudioとMicrosoft 365 Copilotの違い(比較表)
Copilot StudioとMicrosoft 365 Copilotの違いを表形式でまとめると以下のようになります。
| 観点 | Microsoft 365 Copilot | Copilot Studio |
|---|---|---|
| 主役 | 使う人(エンドユーザー) | 作る人(maker/開発/情シス) |
| 目的 | 既存のM365業務を“その場で”支援 | 自社/部門向けのエージェントを作成・運用 |
| どこに出る? | Word/Excel/Outlook/Teams等のアプリ内 | Teams / Web / Microsoft 365 Copilot など“公開先”を選ぶ |
| データの扱い | Microsoft Graph等で仕事データを文脈に回答(権限尊重) | 知識ソース/コネクタ等を設計して“このエージェントは何を見るか”を作り込む |
| カスタマイズ | 既製品としての体験が中心(+ エージェントで拡張) | 拡張そのものが本体(作成→公開→運用) |
| コスト/ライセンス感 | ユーザー単位ライセンスの世界観が中心(※詳細は契約次第) | Copilot Creditsによる消費(prepaid pack / pay-as-you-go)が基本。2025-09-01に課金単位がmessages→Copilot Creditsへ統一。Microsoft 365 Copilotユーザーが利用する社内向けエージェント等は、追加課金なし扱いになるケースもある(条件・制限あり)。(learn.microsoft.com) |
どう使い分ける?
パターンA:とにかくWord/Excel/TeamsでAIを使いたい
→ “組織データ(メール/会議/チャット/ファイル)に自然にグラウンディングした支援”まで求めるなら、Microsoft 365 Copilotが本命となります。
(Webグラウンディング中心のCopilot Chatでもアプリ内チャットは使えるが、既定では組織データに自動でグラウンディングしません)
パターンB:社内規程・情シス手続き・人事FAQなど“社内専用”の窓口が欲しい
→ Copilot Studioで社内向けエージェントを作ってTeams等に公開。知識ソースをSharePoint等に寄せると運用しやすいです。
パターンC:Microsoft 365 Copilotに「社内専用の専門家」を追加したい
→ Copilot Studioで作ったエージェントをMicrosoft 365 Copilot向けに公開 する(※組織への展開はカタログ登録/インストールが必要)、が選択肢になります。
作ったエージェントは、Microsoft 365 Copilotのチャットで@mentionして呼び出す形が説明されています。
FAQ
Q1. Copilot Studioを契約すれば、Microsoft 365 Copilot(Word/Excelのやつ)も使える?
A. 別物となります。Copilot Studioはエージェント作成/公開のプラットフォームで、Microsoft 365 Copilotはアプリ統合のユーザー体験です(ただしCopilot Studioで作ったエージェントをMicrosoft 365 Copilotに公開して拡張する“関係”はあります)。
Q2. Power Virtual Agentsはどうなったの?
A. 2023-11-15に、Power Virtual Agentsの機能がCopilot Studioに含まれる形になり、名称としてPower Virtual Agentsは使われなくなる、と案内されています。
4. まとめ
- Microsoft 365 Copilotは、Word/Excel/PowerPoint/Outlook/Teamsなど Microsoft 365アプリの中で“使う” 生産性AIです(ユーザー体験が主役)。
- Copilot Studioは、社内向けのFAQ・業務支援・自動化などを担う エージェントを“作る/拡張する/配布する” ための基盤です(作り手が主役)。
- どちらのCopilotを使うかは、まず “体験(使う)” と “基盤(作る)” に分けると整理しやすく、検討・導入も進めやすくなります。
次の一歩(迷ったら)
- まずは Microsoft 365 Copilot で「日常業務の改善(要約・下書き・分析)」を体験して、効果の出るユースケースを見つける。
- 次に、社内ルール・手続き・FAQなど “組織固有の知識” がボトルネックなら Copilot Studioでエージェント化してTeams等に展開する。
- Microsoft 365 Copilotを利用している組織なら、必要に応じて Copilot StudioのエージェントをMicrosoft 365 Copilotに追加して「専門家」を増やす。
※本記事は 2025-12-22 時点の公式ドキュメントを元に整理しています(名称・同梱・課金まわりは変更されやすいため、最新情報は公式を参照してください)。
参考文献(参照日: 2025-12-22)
- Microsoft Copilot Studio(製品ページ)
- Extend Microsoft 365 Copilot with agents(Copilot Studio)
- Copilot Studio licensing(Copilot Studio)
- Key concepts – Publish and deploy your agent(Copilot Studio)
- Knowledge sources summary(Copilot Studio)
- Microsoft 365 Copilot overview(Microsoft Learn)
- How does Microsoft 365 Copilot work?(アーキテクチャ)
- Overview of Microsoft 365 Copilot Chat(Microsoft Learn)
- Microsoft Power Virtual Agents, now part of Microsoft Copilot Studio(ブログ)
